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水曜日, 8月 20, 2008
【伊藤正の北京奥運考】 商業化の犠牲になった劉翔
男子110メートル障害1次予選で、スタート前に足を押さえる劉翔。この後棄権、退場した=国家体育場(共同)
2008.8.19 20:08
このニュースのトピックス:北京奥運考
男子110メートル障害1次予選で、スタート前に足を押さえる劉翔。この後棄権、退場した=国家体育場(共同) 18日の陸上百十メートル障害1次予選で、右アキレス腱(けん)損傷のため棄権した中国の英雄、劉翔に対し、ネット世論の非難が続いている。習近平国家副主席が見舞い電を打ち、党中央宣伝部の「指導」で新聞やテレビが棄権を擁護する報道に力を入れているものの、あまり効果はなかったようだ。
大手ポータルサイト「新浪ネット」が行った投票調査では、19日昼現在、約60万の投票中、「棄権を理解する」は37%で、前日よりわずかに増えるにとどまった。それだけ国民の期待が大きかったといえるが、それだけではあるまい。
アテネ五輪で、東洋人として初めて同種目の「金」を獲得、2年前には世界記録も樹立した後、彼の「商品価値」は急上昇し、広告に出まくって「大金持ち」になったことへのやっかみも、ネットへの書き込みからうかがえる。
中国メディアによると、劉翔は昨年、少なくとも8000万元(約13億円)の収入を得たが、五輪連覇の期待が高まる中で、北京五輪のイメージ広告のモデルにもなり収入が急増。現在、契約中のスポンサー企業は14社あり、もし連覇を果たしていたら今年の収入は5億元(約80億円)に達したとの推計もあった。
広東省広告公司副理事長の丁邦清氏によると、棄権による経済的ダメージは、劉翔本人が1億元以上、スポンサー企業が30億元以上という。実際、一部スポンサーは、契約見直しを進め、運動具メーカーの「ナイキ」はすでにネット広告から劉翔の写真を外した。
劉翔のコーチによると、脚部の異常は今春来のものだった。しかし彼には国家と国民、そしてスポンサーの期待が重くのしかかっていた。6月に彼の世界記録を破ったキューバの選手が強力なライバルに浮上した後、圧力はさらに増大、過酷な練習を重ねたことが裏目になったという。
中国陸上界が世界の注目を浴びたのは、1993年の世界陸上(ドイツ・シュツットガルト)で、馬俊仁コーチ率いる「馬軍団」が女子千五百メートル、三千メートル、一万メートルで金をさらったときだった。
そのとき一万メートルで女子として初めて30分の壁を破ったエースの王軍霞は96年のアトランタ五輪で、五千メートルで金、一万メートルで銀を獲得した。当時、王軍霞は獲得賞金の分配問題で馬コーチと決別、馬軍団は解消していた。
その後、女子中長距離界を制したのは王徳顕コーチ率いる「王軍団」で、その一員の刑慧娜はアテネ五輪一万メートルで金を取ったが、やはり賞金分配問題や王コーチの暴力、薬物疑惑などで解散した。
内外の競技会での賞金が選手とコーチの主要な収入源だった時代は、過去になった。スポーツが商業化するにつれ、一部の有名選手は、広告に出るようになった。特に五輪の金メダリストでルックスのいい選手は引っ張りだこだ。
男子の劉翔とともに売れっ子に、アテネに続き今回も女子板飛び込みで金を取った郭晶晶がいる。彼らは、中国体育総局に所属しながら、独自のマネジメント集団をつくり、広告収益を上げていく。
かつて競技会の賞金の半分は国家に上納、残りを選手とコーチが分けていた。現在も上納制度は健在で、広告収入だけでなく、米プロバスケットNBAで活躍する姚明らの契約金の半分は上納するといわれる。それは、人材の発掘、育成や報奨金の原資になる。
北京五輪の金メダリストへの報奨金は最低100万元(1600万円)だそうだ。金メダルラッシュの背景には、ステートアマ制と商業主義を組み合わせた中国独自のシステムがある。劉翔は商業主義の犠牲になったともいえまいか。
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